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電通デジタルの行く末を勝手に想像してみる

電通デジタル

セプテーニとの資本業務提携契約の締結

大手ネット専業代理店からの驚きの声は少ない

セプテーニ・ホールディングスとの資本業務提携契約の締結、同社株式に対する公開買付けの開始等に関するお知らせ - ニュースリリース一覧 - ニュース - 電通

セプテーニと電通の資本業務提携は、業界的にはかなり大きなニュースで、中堅代理店は震撼、大手代理店はそこと手を組んだか、という印象を受けたと思います。

中堅代理店にとっては、デジタル広告専門代理店の5強の1つであるセプテーニが電通と手を組んだことによって、より上位に食い込みづらくなってしまったという印象を受けたのではないでしょうか。

またTV CMを電通、博報堂、ADKが牛耳っているように、デジタル広告もいずれ主要三社に集約されていくのではないかと、不安な声も上がっているかと思います。

一方で大手ネット広告代理店にとっては、確かに電通とセプテーニのタッグは脅威ではあるものの、そこまで驚きの声は上がっておらず、寧ろ「セプテーニと組んだか」という印象を受けたような気がします。


電通は色々な代理店に協業を持ちかけていた

実は電通は、電通デジタル発足前から上位代理店に対して協業の話を持ちかけていたのです。

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以前まではオプトと資本業務提携をしていましたが、2017年に提携解消となっております。こちらの記事には「オプトは電通との提携について両社の目的に照らして一定の成果を得たとしている。」と記載されていますが、業界的にはうまくいってなかった、という噂が広がっているのが実情です。

電通がインターネット広告専業代理店に協業を持ちかけるのには理由があります。ご存知のように電通は日本最大の広告代理店で、世界でみても売上ランキング5位に入っています。そんな電通は非常に多くの広告主を抱えており、薄利多売なインターネット広告の市場規模が広がる中で、電通内だけでは業務を回せなくなってしまっているのです。

また2015年の電通女性社員自殺事件によって22時退社が義務付けられ、より一層、業務が回らなくなっていったようです。(知り合いのネクステッジ電通から電通デジタルに移動になった社員が嘆いていました。)

そのため電通よりもインターネット広告のノウハウがあり、且つ電通ルールに縛られない外部企業の協力を仰ぐことによって、そのような課題を解決しようと電通が動いていることは、業界人にとってよく聞く噂だったのです。

しかし大手代理店としては、プライドの高い電通の営業が持っている案件のサポートなんか大変で仕方ないし、薄利多売なインターネット広告のマージンを折半なんて、あまりに旨味がなく、どこからも受け入れられなかったのです。


電通デジタルの発足

元々ネクステッジ電通という、電通の冠を持っただけの、あまり目立たないインターネット広告専業の代理店がありました。ネクステッジを起点として、電通のインターネット広告の本格参入を市場に見せしめ、業界全体が震撼しました。

しかし、電通デジタルは採用活動で大きな失敗をしてしまったのです。

前提としてこのブログでちょろちょろと書いていますが、インターネット広告専業代理店からインターネット広告専業代理店への転職を考えている人は非常に少なく、仮にあったとしても下位代理店から上位代理店への転職なのです。そのため電通デジタルに限らず、大手代理店は経験者採用にどこも手を焼いているのが実情です。

そこで電通デジタルは他社では提示できないような高い年収で、経験者を採用していこうと考えました。これが大きな失敗だったのです。

サイバーエージェントをはじめ、セプテーニやアイレップなど、上位代理店で働く人材は、業界のスピード感や先進性などに惹かれ高い志を持って働く人が多いことは事実ですが、もちろんそうではない人も少なからずいます。

高い年収を提示して釣れた人材の殆どは、そういった高い志を持って働いている人ではなく、年収が簡単にあがる&電通ブランドに惹かれるような志が低い人材ばかりだったのです。

更には「仕事はできないけど、自分は経験者だと天狗になっている中途採用の人材」と「狭き門である電通の新卒採用をくぐり抜け、努力した分プライドが高い電通営業」がうまいこと連携して仕事が進められるわけもなく、電通デジタルの話題は次第に少なくなっていったのです。


VOYAGEを子会社化

VOYAGEってなんの会社?

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セプテーニと資本業務提携を結んだ次の日、今度はVOYAGEを子会社化した電通。電通デジタルのときのように勢いよく、市場に存在感を示していきます。

そもそもVOYAGE GROUPってなんの会社なのか。端的にいえばデジタルメディアの囲い込みを行っている会社です。具体的にはSSPやADNW事業をやっている会社ですね。SSPだと「fluct」、ADNWだと「Zucks」が主力商品です。

さて、なぜこのようなデジタルメディア事業を行っている企業を子会社化したのでしょうか。


独自面の開発で差別化を図る

以前の記事に書いた気がしますが、代理事業は「人」が重要で、市場が拡大するにつれて差別化が難しくなっていきます。不動産業界をみるとイメージしやすいでしょう。インターネット広告代理事業も、主にはGoogleやYahooの広告枠を売っている上に、GoogleやYahooの営業担当からノウハウの共有なども受けるため、やはり差別化ポイントは「人」になりがちなのです。

各社差別化を図り、DMPや自社DSPを開発するも、結局は類似商品が出てきたり、代理店を使ったほうが販路が広がるためケースが多く、大きな差別化には繋がっていない状況です。もちろん、自社商材であるDSPを自社で売れたら利益幅はあがるのですが。

そんな中、なぜ電通はVOYAGEを子会社化したのでしょうか。独自面の開発といっても正直想像ができません。GoogleやYahooのネットワーク広告で殆どの一般面に配信ができる今、独自面を開発できるとは正直思えません。

超個人的な意見としてはVOYAGEはアドテクの会社なので、エンジニアやSSP・DSPに強い営業を集めたかったのかなぁと漠然と考えています。

ちなみに今更独自面の開発はナンセンスだ!と言いたいわけではなくて、サイバーエージェントが手がけたAbemaTVなどは凄いと思っています。まさに競合を寄せ付けない独自性があると思います。


電通デジタルの行く末

インターネット広告代理店は5強から3強へ?

インターネット広告代理店の5強といえば(勝手にいってますが)、サイバーエージェント、セプテーニ、アイレップ、オプト、トランスコスモスですよね!?(勝手に)

個人的には将来的に5強から3強になるのでは、と思っています。サイバーエージェント、セプテーニ(=電通)、アイレップ(=博報堂)という風に。そもそもトランスコスモスはコールセンター事業がメインなので、このままずっと今と同じように、消耗戦であるインターネット広告事業に注力し続けるとは思えません。

オプトに関しては行く末が楽しみですが、トランスコスモス同様で別事業の幅が非常に広いため、インターネット広告事業を縮小させる動きは取らないとは思いますが、徐々に3強に離されていくのではないかと思っています。

電通はインターネット専業広告との付き合い方が上手ではなく、上から目線な感覚はどうしても拭えません。実際どうかは知りませんがアイレップと博報堂がうまくやっているように、電通のデジタル事業を拡大させるためには、総合代理店の人材と、ネット専業代理店の相互理解が大事だと思っています。

その中で今回のセプテーニとの資本業務提携は非常に興味深く、上手な関係性を築くことができれば、上記のように3強になっていくのではないかと予想しております。


電通デジタルは?

では電通デジタルは?超ドライな意見を言うと、引き続き作業屋としての立ち位置を担い続けると思います。セプテーニの受け入れはある種、電通ルールでインターネット広告事業を拡大するという考えは捨て、外部企業の力を借りて拡大していく考えにシフトしています。

そのため恐らくセプテーニは現状から大きく逸脱することなく、今までどおり業務を遂行していくでしょう。電通としては、今回の資本業務提携が失敗したら、もう後がないと言っても過言ではないのです。であれば慎重に協力関係を築いていくことが予想されます。

一方で電通デジタルとしては新卒を大量に雇い、業界知識はあるけど仕事はできない中途採用を多く雇ったため、今の状態から新しい切り口で攻めることは難しいと思います。そのため、現状維持で電通本体のデジタル部門の下請けとして全うし続けるでしょう。

しばらくは。。。